詩7 七夕

七夕

  

 ひかり晴れた空 

 彦星と織姫と
 そこら中にひしめいて 

 泣いたような
 笑ったような 

 「あなたを
  こよなく嫌悪します」

 

 

詩6 空を拓きながら

空を拓きながら

 

 サヨウナラ

 そして道は創まる

  傷は深いが

 死ぬことはない

 俺はただ俺の次の一歩へ

 正確に着弾しよう

  いつかさめざめと

 嬉しい日のために

 

 

詩5 旅人

旅人


 彼の部屋にはノートが沢山あって
 どれもこれも使い切っていないのだった

 ―どうしてこんなにノートを買うのですか

 ―ああそれはみな旅に出ているのですよ

 

 

詩4 ふるさと

ふるさと


 メソッドはもうたくさん
 あなたはご存知でしょう?
 たまものに還るすゞしい音や
 ほがらかな径 [こみち] を
 ふるさとにいるのは誰?
 あなたの華やぎをいつも
 祈っているのは?
 まっすぐ前を見てごらん
 そして焼きたてのパンのように
 あたたかく香ばしい言葉を言ってごらん
 さみしさが炙りだしたものへ
 何度でも辿り着けるように
 「愛」と
 「愛している」と

 

詩3 エルピス

エルピス


 夕立
 繁華街の珈琲屋のひさしに駆け込んできた
 女学生は荒い息のまま
 瑠璃色のかばんから携帯をとりだす
 とそれは蛍のように灯って
 思春期のおそらく十七光年を経て辿りついた星の言葉を
 余念なく捺してゆく
 (ここにあらずの心の
  謳 [うた] に類した捜索願い)

 

  虹
 そして小降りになるやいなや
 匂い立つアスファルトの上を
 月面でする跳ぶような足どりで往った
 ふたつの笑くぼと乳房とたずさえて
 (愛 [リーベ] と名づけた品種を採りに
  雀躍と)

  

詩2 接吻

 接吻


  甘味な窒息―――

  ダチュラの花の下で
  心は取り返せないほど浚われた
  (ぼくらの唇は青変したという)

  以来多くの言葉を費やして寂しさを凌ぎながら手を携え
  臈たけた花の中をすすんでいると信じた

  そうではなく疑うことを自らに禁じて
  ぼくらは慎み深く眠りあったのだ
  行き場のないやさしさを少しく持て余しながら

  (ぼくの何かが終わり あなたの何かが始った
   訃のように遠いポワン) 

 

詩1 決起

決起


  雨上がりの朝
  前方にまっすぐ光る線路は軌跡ではない

  凝然とそれをみる俺は
  すでに深呼吸をはじめている 

  わかるか 

  時間を汚さないことの
  古傷に音をあげないことの
  刃のように正直であることの 

  今日へ捺す みずみずしい俺の決起だ