七夕 ひかり晴れた空 彦星と織姫と そこら中にひしめいて 泣いたような 笑ったような 「あなたを こよなく嫌悪します」
空を拓きながら サヨウナラ そして道は創まる 傷は深いが 死ぬことはない 俺はただ俺の次の一歩へ 正確に着弾しよう いつかさめざめと 嬉しい日のために
旅人 彼の部屋にはノートが沢山あって どれもこれも使い切っていないのだった ―どうしてこんなにノートを買うのですか ―ああそれはみな旅に出ているのですよ
ふるさと メソッドはもうたくさん あなたはご存知でしょう? たまものに還るすゞしい音や ほがらかな径 [こみち] を ふるさとにいるのは誰? あなたの華やぎをいつも 祈っているのは? まっすぐ前を見てごらん そして焼きたてのパンのように あたたかく香ば…
エルピス 夕立 繁華街の珈琲屋のひさしに駆け込んできた 女学生は荒い息のまま 瑠璃色のかばんから携帯をとりだす とそれは蛍のように灯って 思春期のおそらく十七光年を経て辿りついた星の言葉を 余念なく捺してゆく (ここにあらずの心の 謳 [うた] に類し…
接吻 甘味な窒息――― ダチュラの花の下で 心は取り返せないほど浚われた (ぼくらの唇は青変したという) 以来多くの言葉を費やして寂しさを凌ぎながら手を携え 臈たけた花の中をすすんでいると信じた そうではなく疑うことを自らに禁じて ぼくらは慎み深く眠…
決起 雨上がりの朝 前方にまっすぐ光る線路は軌跡ではない 凝然とそれをみる俺は すでに深呼吸をはじめている わかるか 時間を汚さないことの 古傷に音をあげないことの 刃のように正直であることの 今日へ捺す みずみずしい俺の決起だ
あるコメットハンターの臨死体験によれば、 未来はここへ来ているという。 例えば3年後の私は、ニーチェのような孤独をかこつ今の私を、 どのように思っているのだろうか。 それは、とりもなおさず、今の私が過去の私をどのように思い、 受け止めているかに…